樋口由紀子
そもそもの噓の初めのゴム乳豆
奥村丹路
「ゴム乳豆」とはおしゃぶりのことである。赤ちゃんが泣きやまないときに、それを与えるとホンモノの乳首と間違えて、あっという間に、ぴたりと泣き止む。摩訶不思議と私も子育てのときにたいへん重宝させてもらった。あれがなければ、睡眠不足で育児ノイローゼになっていたかもしれない。我が子に最初に噓というものを教えたのは私だったのだ。噓は身体から覚えていく。
「ザ、川柳」だなと思う。川柳とはなにかとわからなくなるときに、伝統川柳を読む。「そもそも」「噓の初め」「ゴム乳豆」、それぞれ別種の、役割の違う言葉を無駄なく、抑揚をつけながら平面的に並べて、簡素に言い切る。それでいて、人間観察が優れ、まさしく人生を言い当てている。
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