【俳誌拝読】
『大(ひろ)』no.20(2012年新年・冬号)を読む
西原天気
発行人・境野大波。本文ページ数44頁。招待作家、同人諸氏の俳句作品、その選評・観賞のほか、俳論、エッセイ、書評等、ヴァラエティに富む誌面構成。
能の世界では、たとえどんなに悲惨な人生を描いたものであっても、多くは最後に舞を舞うことによって救われる、と虚子は述べている(『俳句への道』)。つまり、現世の地獄から極楽世界への転移を、舞い歌い遊ぶことで実現するのだが、そうし極楽の文学こそが俳句なのだ、と虚子は言いたかったようだ。(境野大波「悪人の俳句」)以下、何句か。
聞耳を立つる蓑虫あらば切れ ふけとしこ(招待席)
金華山より下りてきし猪道か 境野大波
雲下りて来る山早く眠れよと 花房なお
白桃を啜りて着きぬ川つぱら 前田りう
数珠玉の色づくほどの風そよぐ 石田遊起
どの舟も波に揺れをる帰燕かな 井関雅吉
かたつむり冬の日差しの石垣の 遠藤千鶴羽
鐘ついて綿虫育てゐたりけり 武井伸子
ひとところぐでんぐでんの酔芙蓉 土岐光一
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