2012年2月17日金曜日

●金曜日の川柳〔高橋散二〕 樋口由紀子


樋口由紀子








腰元になって舞台で眠くなり


高橋散二(たかはし・さんじ)1909-~1971

確かにセリフも少なく、見せ場もなく、ただ座っているだけの腰元の役では眠くなるのはしかたがない。が、役者なんだから、眠ってはいけないし、眠ったらたいへんなことになる。人生にも似たようなことが多々あるなと思う。

〈尻からげして死んでいる定九郎〉〈女房へ平に平にと太郎冠者〉など芝居を材にした川柳を散二は多く詠んでいる。芝居を原寸大で詠み、余分な感慨は加えていないけれど、切り取り方に人間の哀歓が見え、そこに作者の思念がある。

〈うちの社の山本富士子茶をくばり〉などのユーモアのある句も多く、〈茹で玉子きれいにむいてから落し〉の延原句沙彌と〈院長があかんいうてる独逸語で〉の須崎豆秋と「ユーモア作家三羽烏」と呼ばれていた。『花道』(1973年刊)所収。


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