〔今週号の表紙〕
第253号 えきすぱんしょん
佐藤りえ
曇っているのに妙に明るい。
じぶんの影も見えないような曇天。めぐりのものがくっきりと見えてその輪郭にゆらぎがない。日の光を受けて必要以上に強調されたところがないからなのか、すべてが等しく遠くにあるような、まったく近くにあるような、不自然な距離感に支配されだした。
ふと、目の前の西洋の駅のようでもある建物が膨張をはじめたような錯覚に陥った。低い雲のほうへ向けて、周囲の建造物や道路との隙間を埋めて、どんどん膨らんでいく。煉瓦のひとつひとつがわかちがたく結びつき、こちらへ向けて迫ってくる。
巨大な建物は基礎ごと宙に浮かび上がり、虚空のかなたで、いつかどこかで見た天空の城になるだろう。
……か?
いや、ならない。
妄想も膨らむ、ものみな芽吹く春である。
撮影場所:恵比寿
●
週俳ではトップ写真を募集しています。詳細は≫こちら
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿