【俳誌拝読】
『雷魚』第93号(2013年1月1日)
B5判、本文34頁。発行人:小宅容義。
附録として『八田木枯追悼号』。
八田木枯の100句(寺澤一雄選)のほか、同人による「八田木枯の一句」、「雷魚の会」内外から追悼エッセイ10篇、角谷昌子「八田木枯論~異界を覗く」ほか。
なかでも寺澤一雄による「八田木枯句集解題」はコンパクトかつ貴重。
以下、第93号本誌に掲載の同人諸氏俳句作品より。
父は黒潮オハイオから手紙 蘓原三代
手袋の残る片手のようにいる 森 章
遠眼鏡夕凪の街なめていく 神山 宏
はじかみの一つひとつの形かな 亀田虎童子
秋すでにこそりと桐の葉の落ちる 北上正枝
秋風や四角に切って大谷石 小島良子
朝顔の種とる痩せたのも抓む 小林幹彦
秋に入る草の中から杭の影 櫻井ゆか
蟷螂の口中くらくもえにけり 鈴木夏子
漱石も砥石も暑し金物屋 関戸美智子
冬椿海がざらざらしてきたる 竹内弘子
東京の境に川や草の花 寺澤一雄
海を聴く向日葵黒き首を垂れ 遠山陽子
夏の蝶ダムの深さに吸はれけり 平佐悦子
うす墨のひとふでがきの風は秋 細根 栞
鮟鱇が剝がれつつ見る街あかり 増田陽一
そのそもの事をもそもそ夜長し 松下道臣
かつてつかいし重石は石に白泉忌 三橋孝子
弦月の一人を容れてエレベーター 宮路久子
自転車を電車に乗せて夏の果て 茂田慶花
滝落ちて地球の隅っこだと思う 山中理恵
雪吊りにはげしい雨となりにけり 遊佐光子
犬小屋を出て犬吼ゆる暮の秋 太田うさぎ
からすうり午後はさっぱり日当らず 大塚阿澄
岡本高明氏・追悼ページより
だんだんに囀りの木の濡れてきし 岡本高明
(西原天気・記)
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