2013年7月24日水曜日

●水曜日の一句〔川名将義〕関悦史



関悦史








酒さかな揃へ台風待つとせる   川名将義

台風襲来への期待感。ネット内の俗語でいうところの「wktk(ワクテカ=ワクワクテカテカ)」の句である。

台風で興奮する人というのは結構いるもので(無論大した被害が出ないという前提でだが)、食料の買い込みなども、台風で外に出られなくなる前にという実利性を離れて何やらイベントじみた浮き足立ったものになってくる(これまたネット内で発生したことでいえば「台風コロッケ」なる風習もある。台風のときにコロッケを大量に買い込んで食べるのである。由来については各自検索してください)。

自分の家にとんでもない被害が出る可能性も当然思いつつ、多分今回も大丈夫だろうと高を括り、あるいは、万一大丈夫でなかった場合も所詮人間にはどうしようもないことと突発的躁的無常観に居直ったりもして、厖大なエネルギーが通過するスリルを味わう。

「酒さかな揃へ」にそうした祝祭感と期待と不安が入り混じった中での、飄然たる落ち着きがあらわれている。こういう事象を茶化して詠むのにもキャラクター性というのは出るもので、私がやったらおそらくコロッケを買い込むドタバタ的な句になるはずである。


句集『海嶺』(2013.6 ふらんす堂)所収。

2 件のコメント:

たかこ さんのコメント...

オリビアは枕の名前星月夜  たかこ

高知県生まれの夫は、結婚当初、台風が近づくとテンションが上がり
ベランダの片付けをしていました。食べ物も買いこんできてました。
あまり台風の被害を受けた事のない瀬戸内で育った私はそんな夫の行動が不思議でした。


コロッケ調べました。

匿名 さんのコメント...

鳥と風瓢箪の実の一つ熟れ
香澄明花
すべてのメディアの狂乱振りから逃れて、
静かなところで静養しております。

海峡に佇む鳥居鴎飛ぶ
香澄明花

私の住む街には神社より続く勅使道から最後は海に鳥居があります。干潮になると苔むした石柱が現れます。