2013年12月6日金曜日

●金曜日の川柳〔日本村〕樋口由紀子



樋口由紀子






6俵を321と積み上げる

日本村

私は農家生まれなので、祖父や父が収穫時に米俵を積み上げる姿を見て、育った。確かに6俵なら、まず3俵で、その上は米俵と米俵の間に2俵、次も間に1俵を積む。3俵の上に3俵でも、2俵2俵2俵と、縦に積み上がるのではなかった。ピラミッド型に米は備蓄されていた。米俵の形状や米の習性でその方が安定するからだったのだろう。綿々と引き継がれてきた人の知恵である。

人の行う作業を、目にしたものを見事なまでにくっきりと切り取っている。無駄がなく、演出もなく、装飾もなく、それでいて要領を得ている。簡潔ゆえに生き生きと活写している。積み上げられた米俵がくっきりと鮮やかに目に浮かぶ。その景はこの上なく美しかったのだろう。『番傘一万句集』(創元社刊 1963年)



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