2014年2月10日月曜日
●月曜日の一句〔仲寒蝉〕相子智恵
相子智恵
尻餅をよろこぶ尻と春の山 仲 寒蟬
句集『巨石文明』(2014.1 角川学芸出版)より。
尻餅をついた尻の方も、尻餅をつかれた地面である〈春の山〉の方も、ともに喜んでいるという発想が楽しい。
尻餅をつけば尻は痛いはずで、喜ばしい出来事ではないはずなのだが、ついた場所がやわらかくあたたかな土で、なおかつ新たな草が萌え出ている〈春の山〉なら、うれしく、喜ばしいような気がするのだ。それは生きている私の体と、春の山の生命力とが、不意に交流を持つ瞬間だからである。
そう考えると、この山は、夏でも、秋でも、冬でもだめで、やはり〈春の山〉であるなあ、と思う。また体の中でも下半身の〈尻〉という力の抜け加減が、絶妙な俳味を生んでいる。全体的にラ行の音が多いのも、弾むようでとても楽しい。
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1 件のコメント:
作者より。「全体的にラ行の音が多い」という鋭いご指摘ありがとうございます。句会でも楽しい句だとか「と」にしたのがよかったという意見はありましたが、なるほど言われてみれば春の気分がラ音に表われているような気がします。作者が気付いてないというのも何ですが…。
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