2014年2月14日金曜日
●金曜日の川柳〔山本乱〕樋口由紀子
樋口由紀子
のほほんとあははと過ごすバレンタイン
山本乱 (やまもと・らん) 1944~
バレンタインデーも様変わりしたものである。一昔前にはチョコレート売り場は人であふれていたが、今はそれほどでもない。掲句はチョコレートに一喜一憂した時代の作だろう。
作中主体が男か女によって読みは大きく異なってくる。バレンタインデーは男性にとっては心騒ぐ日であり、平静を装っていても内心はドキドキして、その日を過ごしていたはずである。
山本乱は女性である。もちろん、作者が女性だからと言って、女性が作中主体とは限らないが、この場合は女性の川柳だろう。チョコを貰えるのかどうかとそわそわしている男性を尻目に、気づかないふりをして、「のほほん」と「あはは」と過ごしている。そのいじわるな有様が目に浮かぶ。彼女はチョコをあげるつもりはないのか。それとも一日の最後にやっと渡すのだろうか。「のほほん」の「ほほ」、「あはは」の「はは」、字面も楽しい。
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