2018年1月30日火曜日

〔ためしがき〕 電話にあてがわれたメモ・パッド5 福田若之・編

〔ためしがき〕
電話にあてがわれたメモ・パッド5

福田若之・編


1861年,音楽のメロディーを初めて電気的に遠くへ伝えたのはフィリップ・ライスであった。ライスはその機器を「電話」("Telephone")と呼んだ。
(Michael Woolly「電話の発明と発達」、『電話百年史――国際電話を中心として』、国際電信電話株式会社(経営調査室統計調査課)監訳、国際電信電話株式会社、1976年、2頁)



便利さは人間を孤立させる。それは他方で、受益者を機構に近づける。十九世紀半ばにおけるマッチの発明とともに、一連の革新が登場する。それらの共通点は、多数の要素からなる過程を、手のすばやい操作ひとつで始動させることである。この発展は多くの領域で進行する。なかでも電話の例がわかりやすい。以前の器械ではハンドルをたえず回していなければならなかったのが、いまや受話器をとるだけになった。
(ヴァルター・ベンヤミン「ボードレールにおけるいくつかのモティーフについて」、『ベンヤミン・コレクションI――近代の意味』、浅井健二郎編訳、久保哲司訳、筑摩書房、1995年、449頁)



電話の発明百周年にあたる1976年中に世界で4億番目の電話機が設置されるものと思われる。これら電話機の一つ一つが,他の任意の電話機と通話するためには,全世界の電話網は8京(兆の1万倍)の異なった通話接続ができる容量がなければならない。実際に,毎日約15億回の接続が行われており,そのうち150万回(米国とカナダ,メキシコ間の通話は除く)以上は国際電話である。
(J.S.Ryan「百年目を迎えた信号方式と交換方式」、『電話百年史――国際電話を中心として』、国際電信電話株式会社(経営調査室統計調査課)監訳、国際電信電話株式会社、1976年、76頁)



今日でも、電話加入権を売却したり、また質に入れて金を借りることができる。したがって、電話は財産であるが、しかし前述のように、明治から昭和の半ばごろまでは、今日とは比較にならないほどの市場価格であったから、この時代の電話は「一大財産」であった。さらにいえば、単なる「財産」というよりも「財宝」であった。そのため、電話の顔である「電話機」は、たいへん大切にされた。
(逓信総合博物館監修『日本人とてれふぉん――明治・大正・昭和の電話世相史』、逓信協会、1990年、23頁)

2017/12/27

0 件のコメント: