2018年1月1日月曜日
●月曜日の一句〔西村麒麟〕相子智恵
相子智恵
賀状書く京の住所をつらつらと 西村麒麟
句集『鴨』(文學の森 2017.12)所収
掲句〈京の住所〉がよく利いている。「上ル」、「下ル」、「西入ル」、「東入ル」など京都の住所は面白くて、しかも長い。なるほど〈つらつらと〉である。
平安時代の貴族には年賀の書状の習慣があったようで、藤原明衡の「雲州消息」には、年始の挨拶の手紙文例も収められているそうだ。賀状の住所をつらつら書いている現代の様子から、そんな歴史にまで思いが至る。それはすべて〈京の住所〉からのイメージのふくらみなのである。そしてこの句からはどこか雅で余裕のある感じが漂ってくるからだろう。
私の場合、賀状書きは年末の慌ただしさの中で一気に……という感じだが、よい加減に力の抜けた〈京の住所をつらつらと〉からは、新年最初の手紙を書くゆったりとした時間と喜びが伝わってくる。
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