樋口由紀子
阿と吽の間が離れすぎている
猫田千恵子 (ねこた・ちえこ) 1962~
寺院山門の仁王や狛犬など一対で存在する像の阿吽がある。阿吽の呼吸、阿吽の仲などと言われている。一見、阿吽像を見ての感想のようだが、「離れすぎている」を捉えることで、転じて人生の実感にうまく繋げている。
「離れすぎている」と見たのは作者の意見だが、川柳的な視点である。だれもが思わないというほどでもないが、あまり気にとめないで見過してしまうことを、ほとんど人があたりまえに見えていたものをわざわざ「離れすぎている」と書きとめることによって共感を獲得している。
〈半身は太平洋を向いたまま〉〈図書館は濡れないように建っている〉〈脱いでみるなんだ小さな蟻だった〉。『川柳作家ベストコレクション 猫田千恵子』(2018年刊 新葉館出版)所収。
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