2019年1月21日月曜日

●月曜日の一句〔佐藤りえ〕相子智恵



相子智恵






人工を恥ぢて人工知能泣く  佐藤りえ

句集『景色』(六花書林 2018.11)所収

人工知能が身近な存在になってきている。掲句のように、そのうち人間によって造られた人工物であることを恥じて泣く人工知能が現れるのだろうか。けなげで愛らしく、哀しく、それでいてうすら寒い気持ちにもなる、不思議な魅力のある句だ。

『ピノキオ』のように昔から人工物の望みは「人間になる」だったけれど、現代の「VTuber」のAIキャラクターブームなどを見ていると、実際には、人工知能が人工であることを恥じるよりも、人間の方が天然の人間であることを恥じるようになるのかもしれないなあとも思うし、人工知能と人間という区切りがなくなり、もっとシームレスに生活していくことになるのが現実的なのかもしれないとも思う。

掲句は人工と天然は人工の方が恥じる立場だけれど、そのことを通じて天然物である人間がそれを恥だと思わせてしまうところが、どこか傲慢に、うすら寒く照らし出されている。

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