相子智恵
ボクシングジムごと枯れてゐたりけり 川島 葵
句集『ささら水』(ふらんす堂 2018.9)所収
掲句には、最近の“女性も明るくストレス発散”を謳うような「ボクササイズ」のポジティブさはない。『あしたのジョー』の丹下ジムのような、暗くて喧嘩のイメージが強い“ひたすら強くなりたい人”のための昭和のボクシングジムが思い浮かぶ。
ジム入口の草木の手入れも行き届いておらず、冬枯がボクシングジムに及んでいる。枯草の蔓が壁を這っているのかもしれない。すでに廃業しているようにも思われる。
中途半端に古い“昭和感”が漂っていて、味があり、とても好きな句。やがていつかこんなふうに平成の景物のあれこれも「枯れて」と詠まれていくことになるのだろうか。
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