2019年6月14日金曜日

●金曜日の川柳〔北村幸子〕樋口由紀子



樋口由紀子






風がはじまる理容はらだのお顔剃り

北村幸子 (きたむら・さちこ) 1958~

五月に神戸新聞の企画「川柳詠みだおれ」で姫路吟行があった。そのときに作られた一句である。駅前の商店街(みゆき通り)を歩いていると一軒の理容院があった。扉は開かれていて、中までよく見えた。なによりも店名の「理容はらだ」が気になった。私も「理容はらだ」という言葉で一句をものにしたいと思ったがうまくできなかった。掲句は「理容はらだ」を引き金にして、「風がはじまる」と「お顔剃り」の独自のアナロジーを見つけ出している。顔を剃ってもらうとまさしく風がはじまる。

姫路の商店街に単独の帽子屋レコード屋呉服屋の多いことに驚かれた。いままでそんなことは思ってもいなかったが、言われてみれば確かにそうである。こんなつまらないことにこんなに興味を持つ、川柳吟行のおもしろさである。〈帽子屋の帽子に歌を教えます〉〈エレキギターどこにも行けぬ兄がいる〉〈ヒツジヤのハギレ正しい終わり方〉〈ビクターの犬より深い海を聴く〉

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