樋口由紀子
噴水のくにゃくにゃくにゃととまりかけ
延原句沙彌 (のぶはら・くしゃみ) 1897~1959
噴水を見るたびに思い出す川柳である。いきおいのあるときの噴水はそれはそれで、まるで天下を取ったように、他を圧するものがある。自信満々、イケイケどんどん、何も恐れるものないという態度に満ちあふれている。しかし、それが一旦、水が止まりかけたときのあのなんともみじめな姿。過っての栄光のかけらなどみじんも感じさせないくらいのなさけなさである。とても同じ噴水とは思えない。その落差はなんとも可笑しい。それをうまくとらえている。
なんといっても「くにゃくにゃくにゃ」がかわいい。本当にうまく表現したものである。噴水が普通に上がっているときでも、ああ、この噴水も止まるときは「くにゃくにゃくにゃ」とかわいくなるんだろうなと想像して、ニタニタしてしまう。読み手にあらためて大いなる了解を与える「くにゃくにゃくにゃ」である。
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