2019年9月23日月曜日

●月曜日の一句〔村上喜代子〕相子智恵



相子智恵







連結車いつしか二輌秋深む  村上喜代子

句集『軌道』(KADOKAWA 2019.7)所載

〈いつしか〉だから、車輌の連結が一度ではなく段階的に数回切り離されたような感じがする。気づいたらいつの間にか二輌になっていた、というような。自分はそのうちの一輌に乗っていると読みたい。

乗る人が減っていき、主要駅(とは言っても大きくはないように思われる)でまた車輌の切り離しが行われた。〈二輌〉という連結車輛の少なさと〈秋深む〉によって、最後は単線の寂しい路線へこの電車が進んでいる感じがする。

〈秋深む〉で具体的な場所を見せていないので、読者が思い出したり想像したりする風景は、秋の山や寂しい海など一人ひとり違う。ただ〈秋深む〉の寂寥感は皆に共通のもの。こうした心理的な季語によって、景のぎりぎりのところを限定しないからこそ、個々の懐かしさと照らし合わせて、共感を呼ぶ句となるのだろう。

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