相子智恵
冬の星また埋め戻す遺跡かな 五島高資
句集『星辰』(2024.5 角川文化振興財団)所収
遺跡の発掘調査では、全ての記録作業が終わると、掘った遺跡は埋め戻されることが多い。その上に道路が敷かれたり、建物が立ったりすることもあるだろう。
かつてあった暮らしの痕跡。縄文時代から近代まで、そこに暮らした人たちも見上げていたであろう冬の星空。埋め戻しによって、また星空が見えない地中に戻るのだ。そして、埋め戻された同じ場所から星空を見上げている私たち。その遥かな巡り合わせに思いを馳せる。
日本の遺跡数は約46万箇所を越えるというから、今日もどこかで遺跡の埋め戻しが行われているかもしれない。決してめずらしくはない作業を描きながらも、〈冬の星〉によって非常にスケールの大きな一句となっている。
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