樋口由紀子
1000人の妖精たちにからまれる
いなだ豆乃助(いなだ・まめのすけ)1976~
これほど嘘っぽい川柳は久しぶりである。本当に1000人なのかとまずつっこみを入れたくなる。妖精を想像するなら、せいぜい、2,3人である。(妖精は数えるのは「人」なんだとここは妙に納得した)。すさまじい光景で緊急事態であるはずなのに冷静でたじろいでいない。「からまれる」と困惑して、被害者意識を出しているものの、こんなハプニングは滅多にないと心躍りしているようである。
「1000人の妖精たち」で景を決め、「からまれる」で意味を決め、時間を止める。からまれた後はどうなったのかと想像も膨らむが、そもそもこの世ではない不思議な出来事である。日常を解体されていくような舞台設定に飛躍と驚きがあり、言葉で創りあげていく世界を魅力的に愉しく立ち上げた。「晴」(8号 2025年刊)収録。
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