【俳誌拝読】
『里』2012年6月号を読む
西原天気
発行人:島田牙城、編集人:仲寒蟬。A5判、本文36ページ。以下、同人諸氏の作品から気ままに。
饐飯や隣の屋根にいなびかり 狼耳
足で掻く足の裏側明易し 秋山菜穂
つちのこは本当にいる梅雨に入る 洋子
花衣屍のごと重なりぬ 仲 寒蟬
さばへなす神ぞ長湯に居眠るは 島田牙城
ベランダより落ちてブラウス靴その他 谷口智行
無花果の葉のごわごわの母を嗅ぐ 男波弘志
茄子の花ふつうに育ちふつうに嫁ぐ 木綿
半分は自分羊羹切るときも 湾 夕彦
サイダーの泡の向うを影過ぎる ひらのこぼ
蝌蚪の水生活感のありにけり きびのもも
六月のととのつてゐる木のかたち 水内和子
しあわせに直径ありぬしゃぼん玉 月野ぽぽな
月夜かな広場におばあさん踊る 小林苑を
日めくりをめくりたそうな冷奴 倉田有希
押す釦押せばカチリといふ薄暑 上田信治
秋の川棒をつかつて渡りけり 佐藤文香
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上田信治「成分表77」は、差異化と価値について。
際限のない差異化のループ(違うから惹かれ、それに慣れる=飽きると、別の差異化を求める)から脱して、パスコの「超熟」を毎朝のトーストにすることとは?
そのうち週刊俳句に転載されるはずですから、そのときまたゆっくり考えてみればいいことですが、自分の言い方で言えば、「パンて、もともと美味しいものだから。美味しくなければ、こんなに長いこと食べてこなかったわけだから」ということでしょうか。「もともと美味しいもの」というのを忘れた人が差異化ゲームに走るのかもね、と。
ちなみに「超熟」って一度食べてみたのですが、私とは相性が悪かったんですよね。だからって、軽井沢からパンを取り寄せたり、フランス人ブーランジェの大きな写真を飾った店にわざわざ買いに行ったりは、絶対にしませんけれど。
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