2013年6月3日月曜日
●月曜日の一句〔髙勢祥子〕相子智恵
相子智恵
性愛や束にして紫蘇ざわざわす 髙勢祥子
「右向け右」(角川『俳句』2013.6月号「新鋭俳人20句競詠」)より。
スーパーでよく見る、刺身のつま用にパック詰めされた柔らかな青紫蘇では意外と気づかないのだが、紫蘇には産毛があって、触ると痛い。
以前、吟行で長岡の朝市に行ったとき、ひと抱えもある根付きの紫蘇の束がずらーっと売られていて、それをいくつも肩に担いで買っていく人がいることに驚いた。梅干しを漬けるために大量に買うのだという。括られた紫蘇の束は紫を超えてどす黒く、まるで鬱蒼と茂った森の木々のように「ざわざわ」と肩の上で揺れていた。その紫蘇の束には、何億本ものちいさな産毛がざわざわしていただろう。担いだ肩は、きっと産毛で痛んだことだろう。
さて、上五は〈性愛や〉である。大胆な取り合わせだ。この取り合わせにハッとするのは、やはり紫蘇の「ざわざわ」とした産毛の痛さと色とが、肌感覚に響いてくるからである。それだけではなく、剥き出しで無防備な「ざわざわな心」にも響く。性愛の心身と、ざわざわの紫蘇。面白い取り合わせの句である。
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