2013年10月21日月曜日
●月曜日の一句〔川里隆〕相子智恵
相子智恵
身に入むやQの文字打つ薬指 川里 隆
句集『薔薇の首』(2013.8 角川書店)より。
〈Qの文字〉とはパソコンのキーボードであろう。〈Qの文字〉だけでキーボードをタイピングしているところまで読めるのか…という省略の仕方は若干危ういのだが、それも含めて現代の景だと思うのである。
パソコンのキー配列において〈Qの文字〉はいちばん左端に位置する。だからこれは左手の薬指が打っているのだろう。
とくに美しいと思ったのは〈Q(キュー)〉と〈薬指〉の両方が持つ「K音」の硬く冷たい響きだ。その繰り返しが〈身に入む〉の空気感と響きあっていて硬く寒々しい印象をもたらしている。また〈Qの文字〉が“クエスチョンの「Q」”を思い出させることも、ふと心が寒々とする不思議なポイントではないだろうか。答えがわからない「クエスチョン」な日々の中で、秋の冷気や、ものさびしさが身に深くしみてくる気がするのだ。やや深読みに過ぎる鑑賞かとは思うが、不思議な味わいのある取り合わせに惹かれた。
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1 件のコメント:
QWERTY配列だとすると、Qはふつうは小指で打つように思います(もしくは人差し指)。薬指で打つのは小指を怪我したか何かではないかと、それで身に入むのかな、と思いました。
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