樋口由紀子
心配もこたつですると眠くなり
元禄
子どもの頃からこたつは好きだった。学校から帰るとすぐにこたつに入った。こたつに入ると身体と同時にこころも温まり、緊張がとけて安心し、にんまりしていた。
先週紹介した〈6俵を321と積み上げる〉は目にした事実を句にしていたが、掲句は経験した事実を句に仕上げている。こたつに入ると身体がぽかぽかし、ほっとして眠くなるのは知っていたが、心配事があるときでもそうだったのだ。
「心配」の本質と「こたつ」の効用を川柳的というか、斜交いに、違う角度からうまく言い当てている。今でもこたつが好きで、秋の初めにこたつを出し、ゴールデンウイーク頃まで仕舞わないでいる。こたつは足から温まる、そこがいい。『番傘一万句集』(創元社刊 1963年)所収。
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