樋口由紀子
座ろうか立とうかバスという世間
平井美智子 (ひらい・みちこ) 1947~
「バスという世間」の見方に驚いた。動物的な勘のような捉え方である。バスに乗るときは肉体的にも精神的にもいつも同じ状態ではない。元気なとき疲れているとき、嬉しいとき悲しいとき、怒っているときもある。たいていは席が空いていたら座り、疲れていたら空いている席を探すか、詰めてもらってでも座る。バスの席とはそういうものだと思っていた。座るか立つかを決めるのを「世間」を見てから判断するというのは、彼女の生き方そのもののような気がする。
いろんな場に遭遇したときにここではどう対処すべきかを咄嗟に思いめぐらして、行動できる。場を一瞬で見抜いて、にぎやかにするのか、おとなしくするのか、察知する。たぶん彼女はどこでもどんなときでもどんな振る舞いも出来る人なのだろう。そうでなければ、この句は生れない。『窓』(2004年刊 編集工房円)所収。
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