相子智恵
露の玉こはるるまでを歪みけり 堀切克洋
句集『尺蠖の道』(文學の森 2018.9)所収
草葉の上の露の玉が滑って地面に落ち、壊れたところを想像した。地面に打ち付けられた露の玉が歪んで粉々に壊れてしまうまでの僅かな時間が、ハイスピードカメラのような視点で捉えられている。
〈こはるるまでを歪みけり〉は描写として優れているだけではなく、作者の内面の緊張感や屈折までを伝えている。それは壊れるところに焦点が当たってはおらず、壊れる前の「歪み」の方に焦点が当たっているからだ。粉々に壊れることはある意味、解放である。透明な球体が解放に至るまでのぎりぎりの緊張感の中にある歪みが、とても美しい。
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