樋口由紀子
酒ついであなたはしかしどなたです
橋本緑雨
忘年会のシーズンである。酒をついだのはいいが、さて、誰なのか。こういうことは誰にでも一度は経験があるだろう。同じ宴席にいるのだから、なにがしかのつながりはあり、間接的に知り合いなのはまちがいないはずである。が、見たこともない人である。
たいがいは知ったふりをしておく。まして、「どなたです」とわざわざ本人に聞くことなどはしない。しかし、酔いにまかせて聞いてみた。「どなたです」の言葉遣いで生き生きと景を描写する。「どなたです」と言われて相手のきょとんとした様子も手に取るようにわかる。でも、どちら酔っ払いのはず。「まあ、そんなことはより、まあ、一杯」となったのだろう。
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