樋口由紀子
この世からフッとなくなる京都駅
蟹口和枝 (かにぐち・かずえ) 1959~
アッという間にコロナの世の中になった。何が起こるがわからない。京都駅もフッとなくかもしれない。あり得ないことをさもあり得るように言挙げしている。しかし、ひょっとしたら、そんなことがあるかもしれないとフッと思わせる。
京都駅は建造物だから、「フッとなくなる」の代物ではない。フッとなくなるなんて、まるで人間のようである。かと言って、京都駅に感情移入しているというのでもなさそうである。説明不可能な、何の根拠もない感覚を一句にしている。共感とか伝達とは別バージョンの、放り投げただけのような無責任さがこの句の魅力である。「うみの会」。
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