樋口由紀子
インパラの跳ねる月夜に出てみぬか
佐藤幸一(さとう・こういち)
月夜はウサギだと思っていた。しかし、掲句は「インパラ」。インパラはウシ科の哺乳類でアフリカの草原に群れを作って生活している。ウサギより大きく、雄はねじれた角を持っている。「インパラ」にしたところに反骨精神を感じる。誰に向かって「出てみぬか」と言っているだろうか。自分自身だろうか。「出てみぬか」に親近感と迫真性がある。
「インパラの跳ねる」、それも「月夜」が現出し、言葉でまぼろしをみる。「跳ねる」「出て」の動きも視野が拡張していくような感覚になる。この二つの事柄の組み合わせが響き合い、そこは別の世界と繋がっているような雰囲気を醸し出している。
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