樋口由紀子
昨日死んだと言い張っている女の子
松永千秋 (まつなが・ちあき) 1949~
ホラーでもオカルトでもなく、そんな面倒くさい「女の子」を実際に見たのだろう。昨日死んだのなら今日はもうこの世に居ないのに、「ほんとに昨日死んだんだから」といつまでも言い張る。理屈もへったくれもなく、決して譲らない。「言い張っている」の必死さが目に浮かんできそうである。
私にも「女の子」のときがあり、辻褄の合わないことを言い張ったときがあった。作者もすでに「女の子」ではない。もうそこには戻れない。きっとなつかしく、眩しかったのだろう。「女の子」という小さな存在が大人の心に波状していく。「男の子」だったらどうなのかとふと思った。
●
0 件のコメント:
コメントを投稿