樋口由紀子
雨洩りの型ピカソともマチスとも
西尾栞(にしお・しおり)1909~1995
もうあまり見かけないが、家屋の天井や壁に雨漏りのしみがあった。生家でも祖父母の家でもそんな部屋があった。病気で伏せっているときに、そんな天井や壁に挟まれていると、熱にうなされて、必ず恐い夢を見た。天井や壁の染みは鬼や蛇に見えた。
ピカソやマチスの絵とはゆめゆめ思わなかった。いくばくかの揶揄の気持ちも含め、よくわからないという点からの発想だろうが、プラス思考の楽しみ方である。展開の自由さがあり、色彩までありそうだが、ピカソやマチスを持ち出してくるのはあざといともいえる。しかし、わざとさもあざとさも川柳の持ち味である。『水鶏笛(くいなぶえ)』所収。
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