2022年9月9日金曜日

●金曜日の川柳〔高須啞三味〕樋口由紀子



樋口由紀子






待ち呆け来たら殴ろうかと思い

高須啞三味 (たかす・あざみ) 1894~1965

なんて素直で不器用な人なんだろう。イライラ感が最高潮に達し、来ないのではないかという心配で「殴る」しか思い浮かばない。それほど来て欲しくて、会いたいのだ。自分で自分が制御できなく、自分の思いを他では表すことができない。「殴る」がせつない。

しかし、作者も「と思い」だから、そう思っているだけで、実際は今来たふりをするか、それぐらい待っても気にしない素振りをするのだろう、きっと。「待つ」「呆ける」「来る」「殴る」「思う」の動詞の連結だけで一句を仕上げている。

0 件のコメント: