2024年6月21日金曜日

●金曜日の川柳〔城水めぐみ〕樋口由紀子



樋口由紀子





詩人ではない右側がよく渇く

城水めぐみ(しろみず・めぐみ)

「詩人ではない」ので「右側がよく渇く」なのか。それとも「詩人ではない右側」が「よく渇く」なのか。それならば、「詩人である左側」が存在する。どちらにせよ、渇くなら全体であり、右とか左とかで区分できないはずだが、自分の感情の分布を認識し、自分の情報を開示している。

要は理屈や説明ではかたづかない無根拠なもの抱えて、片方の右側はよく渇くのだ。ぎこちなさと融通の利かなさが持ち分だろう。この句は句集の巻頭に置かれている。句集を開いてくれた人へのあいさつであり、自己表明だろう。『甘藍の芽』(2023年刊 港の人)所収。

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