樋口由紀子
白騎士でよかった引っ越しが終わる
兵頭全郎(ひょうどう・ぜんろう)1969~
そもそも「白騎士」でなにがよかったのかさっぱりわからない。「で」がやっかいで、意識的にいたずらに読み手を路頭に迷わす。引っ越しが終わるという一つの成果を謳歌しているようでもある。タイプの異なる空間と時間の流れを独自の定義で一度に見せる。
兵頭全郎の川柳はいつも少し変わっていて、さまざまな意匠を凝らす。難しい言葉を使っているわけでもなく、内容もさっぱりしているのだが、文脈の組み合わせがヘンで、違和感をあえて残す。川柳は説明しすぎるとよく言われているが、彼の川柳は説明することで余計にわけがわからなくなるというからくりを見せる。書かれていないことをいかに読むかではなく、書かれていないことは無理して探さないでほしいと言われているような気がする。『白騎士』(2025年刊 私家本工房)所収。
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