樋口由紀子
今年から喉につかえぬ餅を売る
水本石華(みずもと・せっか)1949~
正月には雑煮の餅を喉につめるニュースが流れる。他人事とはもう言えなくなってしまった。「喉につかえぬ餅」はどんなものなのだろうか。
「今年から」と、本人にとっての一大決意表明みたいだ。いままでは自分の美学やこだわりで、他意はなかったが、どうも「喉につかえる餅」を売っていた。そのために立ち止まってしまい、ひっかかり、寄り道ばかりして、先に進めなくなって、コトがスムーズに運ばないことも多々あった。
独自の比喩を駆使して、気張って言うほどのものでもないことを自在な言葉運びで表現の形におさめ、おもしろさを醸し出している。思ってもいなかった方向からボールが飛んできたような、柔軟な考え方の一句である。「晴」(8号 2025年刊)収録。
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