相子智恵
山焼の匂ふ華厳の闇深し 桐山太志
句集『耳梨』(2023.12 ふらんす堂)所収
序文で師の小川軽舟は〈奈良仏教を代表する華厳宗の総本山が東大寺。ならば山焼は若草山か〉と読む。
もちろん〈華厳〉を、一瞬の中に永遠を含む「一即一切」の世界観で精神的に読んでもいいし、あるいは滝を思ってもよい。どのように読むかは読者に委ねられているのだが、句集名の『耳梨』は大和三山の「耳成山」の古代名であるというところからも、東大寺、若草山焼であると読むと、ひとつ世界が印象的になる。
一句単独ではなく、句集で俳句を読む醍醐味のひとつが、こうした読みができることかもしれない。まさしく「句集の顔」となる一句といえよう。それでいて、分かり過ぎない、漠として掴みがたい。そういうところもまた、美しい。
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