樋口由紀子
鶏冠にブーケ 病室は鯖を焼く
榊陽子(さかき・ようこ)
ブーケは花嫁が結婚式に持ち、祝福や愛の象徴とも言われている。それを鶏冠にとは、嫌み以外のなにものでもない。病室は当然ながら火気厳禁。食事制限もあるのに鯖を焼くことなんてとんでもない。なぜ、そんなことをするのか。喩として機能しているのでもなさそうで、まして、物語のように、なんらかの事情でそうするしかなかったというのでもないだろう。
どのような読まれ方をしてもしかたがないという開き直りがある。さらっと口にした軽みで、やっかいな自分を投影しているように見せかけているが、作品イコール作者ではない。屈託や逡巡を繰り返す、醒めたセンスのキャラクターを立ち上げたのだ。
●
0 件のコメント:
コメントを投稿