
樋口由紀子
悪人になって動物園に行く
佐渡真紀子(さど・まきこ)
物語が始まりそうである。「善人」だと嘘っぽくなって、物語のワクワク感が薄れてしまう。が、この「悪人」もどうだろうか、ちっとも悪人らしくない。そもそも「悪人になって」いるのかどうかもわからない。自分に言い聞かせている。
「悪人になって」と「動物園に行く」には落差はあり、ちぐはぐである。動物園は癒されるというよりも意外と自分の見えない本音や心情がはっきりと見える場所なのかもしれない。なぜ「悪人になって」なのかは訳も理由もわからないが、意味や雰囲気は残る。そんな人の存在を確かに感じることができる。「What‘s」(9号 2025年刊)収録。
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