200号記念誌上句会・選句一覧(4)
お待たせいたしました。選句一覧と作者です。句数が多いので、1日1題ずつ、5日間にわたって発表させていただきます。
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多数のご参加をいただき、ほんとうにありがとうございました。
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【力】
あは雪や針葉樹より湧く磁力 藤幹子
○るかるか○埋図○風族○正則○池田瑠那
■「磁力」という奇怪なものを持ち出す事で雪と針葉樹にありがちな類想を逃れた。(るかるか)
■木の回りから雪が溶けていくのが、どのようなメカニズムかと云う説明に湧く磁力を使うのは困るが、そう云えば、だれでも真理に迫ることになると言うもんだろう。(埋図)
■情景が鮮明なので。(風族)
■針葉樹の必要性には疑問だが、磁力が面白い(正則)
■言われてみると冬の針葉樹には磁力があるような気がしてきます。(池田瑠那)
けふ春の雪にいくばくかの浮力 天気
○埋図○信治○山﨑百花○すずきみのる
■雪に浮力が生じるというのもなかなかな解答と云うべき、いや、そうでなければ、今日の春の雪をじっと眺めている気ににはならない。眺めれば、そう思う。(埋図)
■「けふ」がいいかんじ。(信治)
■春の雪に浮力を感じたのは素敵。止んで、日が差したのでしょう。(山﨑百花)
■季語の説明というような意見も出るかもしれませんが、それにしても「いくばくかの浮力」という受け止めと表現は巧みだなと感心しました。(すずきみのる)
しんきろう表面張力しんきろく 知人
○鴇田智哉
■口をついて出た感がいい。でも、どの言葉も動かしがたい。(鴇田智哉)
タンポポの力はいつも真下向く 木野俊子
つくしんぼ力むてふこと赤子にも 山﨑百花
○瀬戸正洋○たゞよし○和人
■土筆と赤子が力むすがたが似ている。赤子は大人の真似をして力むのである。真似をすることは人としての所作を学ぶことだ。言葉を真似、笑うことを真似、泣くことを真似、物を食べることを真似。そして、人間になっていく。(瀬戸正洋)
■柔らかくなりかけた土を持ち上げて、つくしんぼが頭を持ち上げるように、わずかに体を震わせて力をみなぎらせている赤ちゃん。ああ、お母さん。 次の仕事が待ってるね。忙しい。(たゞよし)
■べたべたですが、2人目の孫が生まれる私としては(和人)
たんぽぽの絮を力の限り吸ふ 信治
まつしろな力うどんのひかる春 鴇田智哉
○山﨑百花○義知
■おいしそうで元気出そう。うどん即エネルギーですもの。しかも力うどん。(山﨑百花)
■力うどんの注文が入ると、独特の節回しで「ちからうど~ん!」とオーダーが入る。その声を聞くとなんとも楽しい気分になるのである。(義知)
やどかりの引つ込む力並でなし 太田うさぎ
○すずきみのる
■私自身の子どもの頃の体験に直に繋がりました。個人的には、とても喚起力のある1句でした。(すずきみのる)
愛の日や力(ちから)ボタンのごとき君 栗山 心
○牛後
■恋人を力ボタンに喩えたのはとても新鮮。(牛後)
渦巻力持てなお止まぬ寄居虫の死 千代
永き日や変なところに力瘤 瀬戸正洋
○埋図○廣島屋○一雄○天気○米男○山田耕司○俊子
■二年もすると、初心を忘れる。忘れたのか、そんなものは持っていなかったのか、別の営業を始める。へんな物を力説して売る。帰りの出口を指す。(埋図)
■「変なところ」というノリシロ部分がよかったのでした。(廣島屋)
■いったい何処に力瘤ができるのでしょうか。力瘤と永き日は合います。(一雄)
■これはひとつの無聊感。力瘤を読んで、これだけ力の抜けた句はめずらしい(天気)
■どこだろう? ww(米男)
■変なところとはどこなのか、それがわからない。そのわからなさが、永日、という語にほどよく親しむ。(山田耕司)
■力こぶが変なところに出来た。探してみたが、たとえば指の先っちょとか。永き日がうごかず絶妙の季語。ひびきあっている。(俊子)
岡持は力まずに持てはだら雪 笠井亞子
○どんぐり○一雄○太田うさぎ○中塚健太
■岡持は見かけなくなったなあ。(どんぐり)
■岡持の持ち方を初めて知りました。(一雄)
■いちばん笑った句!新入りがアドバイスを受けているのでしょうか。はだら雪はたしかに足を取られそう・・・というか単純に可笑しい。(太田うさぎ)
■今回の中でいちばん俳句だ、と思いました。(中塚健太)
看板に力王たびや枝垂梅 一雄
○楚良○池田瑠那○田中槐
■全国各地に「力王たび」の看板があるのですね。(楚良)
■とぼけた味わい。(池田瑠那)
■これはもう、「力王たび」に脱帽です。(田中槐)
亀の頸断つにまつすぐ力ませて 山田耕司
○藤幹子
■指に筋肉の張りが伝わってくる。(藤幹子)
魚は氷に力うどんに揚げし餅 たゞよし
○どんぐり○中村 遥
■揚げし餅が効いている。(どんぐり)
■難しい季語を面白く句にされたと思う。うどんが氷で餅が魚を思わせる。(中村 遥)
金縷梅の風の力のぬけがらに どんぐり
啓蟄や怪力少年頬赤く 米男
○信治○廣島屋
■いろいろいいです。(信治)
■夢枕獏の小説を読んでいるようです。(廣島屋)
拳闘家力石徹冴返る 和人
○憲武
■行け荒野を 俺らボクサー 朝日がぎらぎら 男の胸に 思わず「力石徹のテーマ」を歌ってしまいました。この力石さんは減量後でしょうね。(憲武)
光みな力となりぬ雪解川 るかるか
○苑を○山﨑百花○笠井亞子○太田うさぎ○学
■川面の反射光に「力」を感じる、納得の一句。(苑を)
■今回の特選。一面の雪に反射する光とともに、力強い音まで聞こえてきます。(山﨑百花)
■まぶしいまぶしい春の川パワー!(笠井亞子)
■水面をきらめかす陽光を力と捉えたところが素敵です。早春らしく、励まされるような句です。(太田うさぎ)
■写生が力を得ている。(学)
菜の花の力みて蝶となる夜明け 痾窮
○埋図
■意外なものの変化は、いつでも意表を突く。力み方で変化するというのはさらに意表を突く、見た事もないが、夜明けの説明で、朝の遅い者にとっては納得せざるを得ない。(埋図)
詩は古く無駄力なす雪解川 野口裕
手の甲に力む血管目貼剥ぐ 恵
○るかるか○野口裕
■血管フェチか。目貼剥ぐ際の写生詠として良い。(るかるか)
■よほど頑丈に目貼りしたのだろう。「甲」で景が見えてきて、読む方も思わず力が入る。(野口裕)
春の風春の風力計になる 鈴木茂雄
○義知○佐間央太
■春の風の吹き様が春の到来の計測器となっているという。繰り返しが春へ向かう一進一退感もあり。(義知)
■ヤマザキ春のパン祭り、と続けたいのをぐっとがまん。(佐間央太)
春一番かな入力に切り替へる 田中槐
○杉原祐之○めろ
■「入力」「出力」が妙に季題の「春一番」と響いています。(杉原祐之)
■春とひらがなとの関係は容易に考えつきますが「かな入力」は盲点でした(めろ)
春雪や上野へいそぐ人力車 池田瑠那
春日影なにに喩へん力瘤 すずきみのる
寝返りを打つにも力春炬燵 楚良
○山﨑百花○義知○和人○牛後○田中槐○恵○俊子
■季語が春炬燵ですから、からだに重大な障害があるわけではなく、単にずぼらなのですね。それが分かる、というこちらの状態も困ったものですが。(山﨑百花)
■寝たまま向きをかえるにはどこに力が入るのか。腹、背には力が入るし、足や腕、頭もちょっと上げたりする。結構いろいろなところに力が入る。(義知)
■確かに確かに春炬燵は生臭物の神様です(和人)
■春炬燵で居眠りしていると、寝返りを打つのも大変です。「力」の使い方が巧みです。(牛後)
■脱力、という力のありようを実感しました。こんなだめな人間にはなってはだめだ。(田中槐)
■寝返りを打つにもということは、起き上がることにも力がいるんだろうなあ。いかにも春炬燵ならではの風情(恵)
■大変リアルな一句。若い時は気付かないが、年をとると寝返りにも大変なエネルギー。まして炬燵は脚が4本ある。(俊子)
新入社員へんな力の入り方 中塚健太
○たゞよし○正則
■新入社員は、とかく先輩から見て首をひねるような癖を持っているようだ。社風に慣れるのか先輩が諦めるのか、そんな変な力さえ馴染んでしまうか消えるのか。(たゞよし)
■新入社員とは、こんな感じもあるのか(正則)
蒼天の石榴を割るる力あり 学
大臣の力説虚し桃の花 正則
脱力のポーズのままに冴え返る 篠
○信治
■ポーズ(静止)してたら冷えてきちゃった、という。(信治)
胆力といふもの持たず草の餅 苑を
踏青や女は見せぬ力瘤 憲武
俳人の膂力を隠す春ショール 牛後
○田中槐
■太くてたくましい二の腕を想像しました。素敵です。(田中槐)
白魚を啜るや臍に力入れ 中村遥
○杉原祐之○山田露結○池田瑠那○山田耕司○恵○篠
■「白魚」は軽く啜ることができないですね。確かにどこかに力が入ってしまいます。(杉原祐之)
■「白魚を啜る」という行為と「臍に力を入れる」という行為のアンバランスが妙に可笑しい一句です。臍に力を入れるのは、何か肝心なときに踏ん張るようなイメージがあるのですが、もしかしたら作者は生きたままの白魚を口にするのが嫌で、臍に力を入れて我慢しながら啜っているのかも知れません。(山田露結)
■白魚を啜る自分自身の肉体を意識したのが良いと思います。(池田瑠那)
■力の入れ具合の妙なバランス。「や」に大げさぶりを込めているのがかえって可笑しい。(山田耕司)
■これは間違いなく踊り食い。臍に力入れというあたりに、生きたままを啜る若干の覚悟のようなものが(恵)
■白魚を啜るのは勇気が要る。だから臍に力が入る。(篠)
白梅の咲きしも今朝の力みかな 沖らくだ
味噌豆を煮る一連の力足 義知
目力でオリオンの膝伸ばしけり 佐間央太
○鴇田智哉
■やりましたね、目力でついにオリオンを。元気があれば何でもできる。(鴇田智哉)
力むなら力んでみせろいぬふぐり 廣島屋
力学や官女雌雛の日の暮るる めろ
○知人○千代
■慣性の法則でひっそりと、じっとしているひなたちの顔を思い出します。(知人)
■お雛様が座っているのも、日が沈んでゆくのも、この宇宙の力学にしたがっている。(千代)
力山ヲ抜けど雛罌粟揺るるのみ 風族
○すずきみのる○柳 七無
■項羽のエピソードを素材としていますが、それを離れて独自の世界を作り上げているように思います。(すずきみのる)
■項羽と虞姫の悲哀が伝わってきます。(七無)
力石七つ並びて黄水仙 杉原祐之
力無く 言葉の喉に 流れ落ち 柳 七無
力瘤見せて遠退くうかれ猫 真鍋修也
恋の花影知らずコントラバスの軋み力 埋図
恍惚の眉間に力春の雪 山田露結
○真鍋修也○るかるか○憲武○柳 七無
■女性の恍惚と思いたい。四畳半一間での情交と淡く消えやすい牡丹雪。見事な「神田川」の世界である。(真鍋修也)
■眉でなく、眉間に力があるところが凄い。「春の雪」は動く。(るかるか)
■渡辺淳一の世界ですね。いいっ。(憲武)
朧夜の圧力鍋の微動かな 金子敦
○真鍋修也○るかるか○風族○苑を○義知○どんぐり○栗山心○千代○野口裕○正則○太田うさぎ○中塚健太○めろ
■我が家には圧力鍋はない。鍋の中に蒸気が充満して微動するのだろう。それが柔らかな霞んだ感じの朧夜を的確に表現している。(真鍋修也)
■「朧夜」が効いている。(るかるか)
■上手い句ですね。(風族)
■発見、ですね。朧と圧力鍋の質感の対比、絶妙。(苑を)
■圧力鍋の重い蓋が蒸気で震える、静かな静かな朧夜。(義知)
■何か美味しいものが出来る予感が微動。(どんぐり)
■「微動」が上手いな、と思いました。丁寧に毎日を暮らしている方、という気がします。(栗山心)
■生活の中のこんなところに「力」という字があったのか。(千代)
■圧力鍋は料理時間を短縮するはずだが、えらくじっくり料理しているように見える。言葉のトリックの面白さ。(野口裕)
■朧夜との取り合わせは変わっている(正則)
■朧夜がなんとも効いています。蓋の立てる微振動の音、あの疼くような感じを上手く言って下さった。(太田うさぎ)
■不穏な感じがしました。(中塚健太)
■圧力鍋のわずかな振動の伝わる様は朧夜そのものです(めろ)
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1 件のコメント:
兼題のなかでは一番「表記」にこだわることのできる(小細工を弄することのできるw)お題だと思いました。
看板に力王たびや枝垂梅
力王たび、そういえば今でもありますね~。http://www.rikio.co.jp/
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