200号記念誌上句会・選句一覧(2)
お待たせいたしました。選句一覧と作者です。句数が多いので、1日1題ずつ、5日間にわたって発表させていただきます。
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多数のご参加をいただき、ほんとうにありがとうございました。
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【有】
くず餅で有名な店のわらび餅 信治
○一雄
■葛餅からわらび餅がでてきたところが良かったです。(一雄)
これよりは有刺鉄線鳥帰る 正則
○杉原祐之○金子敦○柳 七無 ○篠
■下五の季題「鳥帰る」で視点が一気に上へむくのが面白いです。(杉原祐之)
■少年の頃を思い出しました。「鳥帰る」が上手い。(金子敦)
■北山修氏の「イムジン河」を思い出しました。(七無)
■上を眺める視線が、「これより向こう」をいろいろと想像させます。(篠)
たましひの有無をいはさず鳥帰る 山田耕司
○真鍋修也○たゞよし○米男○柳 七無
■そう。これは本能、遺伝子、DNAの世界だろう。考えて北へ帰る訳ではない。言われてみれば不思議な習性を、的確に捉えた句だと思う。(真鍋修也)
■シベリアに帰っていく鳥の中で一匹や二匹は「日本に残りたい」などと思っているのもいるのだろうか。鴨は残るのもいるが。(たゞよし)
■魂だけでも帰ってくれればいいが(米男)
ダリア植ゑて有無を言はせぬをとこかな 田中槐
○痾窮○山田耕司
■花の中でもダリアは威圧感満点、有無を言わず選ばせて頂きます。(痾窮)
■攝津幸彦か。有無を言わせぬ花としてダリア、よくなじむ。(山田耕司)
バレンタイン有袋類のふりをする 木野俊子
○るかるか○廣島屋○米男○中塚健太
■季語の斡旋が良い。「ふり」でなく、なってしまった方がもっと良かった。(るかるか)
■「有」で「有袋類」を引っ張り出した句は他にもありましたが、わかりやすいようで実は深い意味があるような……。(廣島屋)
■有袋類のイメージはのろま? 結構すばしっこいやつも多いけれど(米男)
■袋は一杯だからチョコはいらない?袋があるからチョコを頂戴?ポップで大好きです。(中塚健太)
ふきのたう有刺鉄線のある午後 苑を
○るかるか
■実際は、有刺鉄線が囲っている空き地に蕗の薹が生えているのだろう。でも、それ以上のものを想起させる(るかるか)
ぶらんこの有りしところの空いてをり 鴇田智哉
○信治○正則○学
■確かな句かと。(信治)
■今はそこにないのか?ちょっと不思議な句(正則)
■発想がいい。(学)
海市いま見えますと有線のこゑ 中村 遥
○知人○山田露結○栗山心○和人○千代◯憲武○藤幹子○中塚健太○鴇田智哉○恵○篠
■夏でもひなびていそうな海水浴場に響く、けだるい声。どこか幻想的です。(知人)
■「有線のこゑ」がいいですね。私が子供の頃にはわが町でも「本日予定されていた○○小学校の運動会は雨天のため、延期です。」といった有線放送が流れました。「ただ今、蜃気楼が見えています。みなさんお早めに見に行って下さい。」とか言っているのでしょうか。(山田露結)
■旅の気分が出ていて、臨場感がありました。(栗山心)
■この間延び感は何だろう。日本海側のなまりが、下の字余りで見えるよう(和人)
■海とラジオが爽快なイメージだが、蜃気楼が出ているという、一筋縄ではいかない味。(千代)
■富山県魚津市ではこのような放送があるんでしょうか。臨場感のある句。(憲武)
■興奮の声ですよね。しかし聴いてる方は冷めてるでしょうね。ギャップが良い。(藤幹子)
■いかにもありそうな景。リアリティを感じました。(中塚健太)
■「海市」と「有線」が響き合っている。(鴇田智哉)
■もしかしたら本当にそんなことがあるのかも。皆手を休めて見にゆくのだ。のんびりとした感じがいかにも春(恵)
■この臨場感。海市がたしかに見える。句の中には声しかないのだけれど。(篠)
絵踏みせし足裏に有り慈顔かな 真鍋修也
亀有をくすぐつてゐる春の風 太田うさぎ
○廣島屋○栗山心○笠井亞子○野口裕○鴇田智哉
■もしかしたらとても写実な句なのかもしれません。でも、「亀有をくすぐる」という措辞が非現実的で面白かったので。(廣島屋)
■「亀有」という地名のイメージが合っていると思いました。(栗山心)
■すばらしい地名だ。風のおかげで亀はすぐにでも鳴きそうです。(笠井亞子)
■どうしても、こち亀を思い出す。あまりにもつきすぎなのが、かえって効果的。(野口裕)
■地名が絶妙。(鴇田智哉)
空有の貼紙剥がれゆく東風よ 笠井亞子
○どんぐり○千代
■地方の寂しさも。(どんぐり)
■小さな荒廃。こんなふうに人工物(に自然が手を加えたもの)が詠めたらかっこいい。(千代)
啓蟄や有平糖の大人買い 野口裕
江の島弁財天恋猫の有無 瀬戸正洋
国有地より恋猫として現るる 篠
○杉原祐之○瀬戸正洋○山田露結○恵○めろ
■「国有地」の空地。そこから現れる「恋猫」。その前はなにに使われていたのか謎めいてきます。(杉原祐之)
■ひとつの歴史と思って見ると面白い。「国有地」とは、為政者の命により緻密に調べられた国の歴史。「恋猫」とは個人の思い出と希望。過去と未来だ。(瀬戸正洋)
■「国有地」といってもいろんな場所があると思うのですが、「恋猫として現るる」と言われると何だか急に「国有地」が妖しい場所のようにも思えてきます。(山田露結)
■国有地といえば荒れ放題の更地などであろうか。私道などをうろついていた猫が、鼻息も荒く、目をらんらんとさせた恋猫として国有地から出てくるというのは何だか風刺的でもある(恵)
■私有地なら恋猫で現れないのか?と軽く突っ込みたくなる(めろ)
桜湯や有袋類を裏返す 藤幹子
○佐間央太○笠井亞子○一雄○田中槐
■うらがへりしてうらがへりしておしり(佐間央太)
■すごく返しにくいと思う。(笠井亞子)
■有袋類を裏返すと、袋が見えるのかな。裏返してはいけない動物を裏返しているような気がします。(一雄)
■袋は裏返したくなります。桜湯のしょっぱさや香りがその動機になるという感じに共感。(田中槐)
子狐と仙人花菜漬有〼 佐間央太
春の雲有蓋貨車の屋根に人 栗山 心
○金子敦○一雄○すずきみのる◯憲武○藤幹子○牛後
■のどかな景に、「春の雲」がぴったり。(金子敦)
■妙な所に人が居ますね。緊急感よりも春の雲で長閑です。(一雄)
■あるいは情景的には日本ではないのかもしれませんが、駘蕩とした印象を受けました。(すずきみのる)
■一読、大列車強盗かキイハンターかと思いましたが、春の雲の下、無為に過ごしている若者でしょう。(憲武)
■のどか。でもインドっぽい。(藤幹子)
■有蓋貨車の屋根に人がいるなんて、アクション映画のワンシーンのようですが、実際は、修理か点検のために登っているだけなんでしょう。青い空、白い雲と、黒い貨車の対比が鮮やかです。(牛後)
春昼の有袋類の袋かな 池田瑠那
○鴇田智哉
■「有袋類」の句があまりに多くて度肝を抜かれたが、それはさておき、この句、飛びぬけておもしろい。「袋かな」って、あなた。(鴇田智哉)
春昼や有閑マダムは蝶の面 米男
○知人
■グロテスクな蝶の顔をストレートに表現にされているなと思いました。(知人)
雪間より有害図書の見えてをり 恵
○山田露結○中村 遥○たゞよし○笠井亞子○一雄○正則
■話題の「有害図書」を題材にしています。「雪間より」がチラ見えな感じでいいですね。(山田露結)
■この冬の間、雪の下に埋もれていた図書、このまま埋もれてそのまま土と化して欲しい。(中村 遥)
■雪の降る前に集積所に捨てられたものか、橋の下辺りに投げ捨てられたものか。有名なアイドルに似ても似つかぬ女の挑発的な顔が雪間に見えたらドキッとする。(たゞよし)
■ここを言うことがやはりおかしい。(笠井亞子)
■雪に埋もれたけど、また出て来る。さすが有害図書です。(一雄)
■有りそうな景に思えて(正則)
地中海よそ事の青さに屈有折 埋図
百千鳥有刺鉄線にて隔つ 山田露結
野遊びや有袋類の全盛期 千代
○牛後
■有袋類の全盛期なら、爆発的な野遊びができそう。エネルギーの満ちあふれた解放感に引かれました。(牛後)
有りたるも無きに同じや春炬燵 学
有り体に言へば墓場のクロッカス 天気
○風族○山田露結○どんぐり○山田耕司
■懐メロの♪かおるちゃん、遅くなってごめんね。。。を思い出して。(風族)
■墓場にクロッカスは不釣合いなものとして提示されているのでしょうか。誰かKYな他人を揶揄しているのかもしれません。「有り体に言へば便所の100ワット」とか、いろいろ試してみたくなります。(山田露結)
■クロッカスの黄に救われる。(どんぐり)
■なんらかを喩えようとしているのである。墓場のクロッカスになぞらえられるものとは何だろうか。そこ面白がれるか否かで評価が分かれる句。(山田耕司)
有り体に言わずにおれぬ磯巾着 沖らくだ
○痾窮○俊子
■磯巾着って口だけで出来ているような姿、さぞお喋り、写生句として。(痾窮)
■磯巾着のもつ悲哀を“有り体”と表現して佳作。(俊子)
有り体に包み隠さぬ枯木かな 憲武
有る者は 「無い」打ち消して 在ると知る 柳 七無
○埋図
■難しい言い方で云えば、それが云える程の文学的才能がないのが問題だが、本当は、それがあろうとなかろうと、大した問題ではない。それが大問題なのである。(埋図)
有楽町出社時間後四温晴 るかるか
○苑を
■午前10時頃かな。有楽町にしては閑散とする、「平日」の、たまたま「四温」で「晴」で長閑な時間。(苑を)
有機燐の人体離るる春の川 めろ
○野口裕
■有機燐自体は人体に不可欠の存在で、死を連想させるはずがないのだが、こう書かれるとどうしても連想させられてしまう。春は死に満ちている。(野口裕)
有限会社殺し屋殺す焼野 知人
有刺鉄線すり抜け春の雀ども すずきみのる
有刺鉄線春が暴発する危険 牛後
○佐間央太○正則
■すん止めというえろす(佐間央太)
■春が爆発というのが突拍子もないように思えて(正則)
有資格者といふ蝶も紛れ飛ぶ 鈴木茂雄
○和人○藤幹子
■この蝶は自己主張しているのか?なんだかおかしい(和人)
■ハローワークかなあ。ただただ字面どおりに取った方が面白くて好きですが。(藤幹子)
有事とは起こさぬものよ春の風邪 杉原祐之
○楚良
■春の風邪でも戦争が始まりそうな嫌な世の中です。。。(楚良)
有人飛行魚氷に上るごときかな 義知
有線にユーミンの曲鳥雲に 金子敦
○中村 遥
■ユーミンの声質が季語と共通していると思う。何よりも〈有線〉の一語が伝える風土性がいい。(中村 遥)
有線の迷ひ人らし残る鴨 どんぐり
○すずきみのる
■「有線の迷ひ人」はどきりとする景で、とてもリアリティーの感じられる作でした。田舎などでは時に実際に経験することだと思います。(すずきみのる)
有線放送ボートレースが波紋呼ぶ 中塚健太
有田哲平枝に棘ある木瓜の花 和人
○栗山心
■これは有田哲平さん以外、ないでしょう。有吉弘行さんだったら、何でしょう。(栗山心)
有難い話じゃないか猫の恋 痾窮
○山﨑百花○天気○めろ
■なになに?と話に首を突っ込んでしまいそう。季語が猫の恋ですから縁談なのでしょうね。お幸せに。(山﨑百花)
■古い日本映画(麦秋とか)の父親のセリフ。「猫の恋」と近くに付けずに、もうすこし離す手もありますが、これはこれで妙味(天気)
■このご時勢、見初められるだけでも充分良しです(めろ)
有明の春月なれど五十肩 風族
○真鍋修也○笠井亞子
■歯痛が未経験者には分らないように、いやそれ以上に、五十肩の辛さは未経験者には分らないだろう。五十肩なのに、有明の月を見たくて車を運転して来た。しかし、月の素晴らしさより肩の辛さに気が取られる。そんな情景を思い描かせる。(真鍋修也)
■下五へのこの展開は・・・とらねば。(笠井亞子)
有耶無耶にしてしまひたり雛あられ 廣島屋
○沖らくだ○山田耕司○田中槐
■雛あられのかわいらしさで、うやむやにしたことも罪のない内容に感じられるところがいい。(沖らくだ)
■ひな祭りには決まり事が多い。その伝統のようなものをさらりと無視してくぐりぬけ、でも、いちおうは雛あられ。(山田耕司)
■雛あられという幸福感の象徴みたいなものを有耶無耶にしてしまう破壊力(?)(田中槐)
有理数指折り数へ入学す たゞよし
朧から有人ロケット天の舟 一雄
霾や有事なくても滅ぶ国 楚良
○埋図○和人
■火の国、神の国も少しは怒る。灰が降って、土石流ともなれば、おおごとである。火も、神も国も、おかしなものとなる。(埋図)
■これはまた皮肉な時事俳句。確かに日本にはそのような危機が(和人)
芹の水ひたして有卦のたなごころ 山﨑百花
○沖らくだ○どんぐり
■有卦は七年続くそうで、明るい未来。やや大仰な言葉も、芹を取り合わせたことで全体的にあっさりした感じを受ける。(沖らくだ)
■きれいな水が一際、有卦ときたか(どんぐり)
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1 件のコメント:
「有」で他に気になった句は
国有地より恋猫として現るる
有限会社殺し屋殺す焼野
です。特に「有限会社」 の句は最後まで悩んだのでした。
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