【俳誌拝読】
俳句創作集『いわきへ』
西原天気
A5判、本文60ページ。定価1,000円。発行人、四ツ谷龍。今年7月および9月福島県いわき市の文化団体「プロジェクト傳」主催の『いわき市の文化財を学び、津波被災地を訪問するツアー』に参加した7名の俳人が句を寄せています。
ひらかれてより雷を孕む地図 鴇田智哉
灯台のまなうらへ蛇たどり着く 宮本佳世乃
漂着のもの指さして日傘より 四ツ谷龍
裏山がそのまま遺跡蜻蛉来る 相子智恵
屠られし鶏の薄目の繊月ほど 太田うさぎ
きざはしに試し吹きして祭笛 菊田一平
積む瓦礫に秋潮といふ蠢く墓 関悦史
津波被災地へ「訪問」しての句作。いわゆる被災当事者ではない者が「そこ」で何をどう詠むのかという困難な問題に対して、作家7名の向き合い方はさまざまのはずです。一冊を読み通して、その問題が少なくとも軽々しく扱われていない印象をもちました。
全体に抑制が効き、その抑制が、土地への敬意と愛情(俳句の本質的な部分ですよね)へと結びついているような気もしました。
冒頭のまえがき的な短文「いわきへ」には、「俳句に対する考えかたはさまざまな顔ぶれ」とあります。おそらくこうしたイヴェントを縁にしてしか1冊の冊子に合同し得なかったであろうメンバー。その意味でも興味深い冊子です。
なお、「本冊子の売上はすべて『プロジェクト傳』への寄付とし、いわき市の復興支援活動に役立てていただきます」とあります。
■問い合わせ先 四ツ谷龍 メールアドレス loupe@big.or.jp
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当該ツアーの模様については、下記の2記事を。
■関悦史 この地を見よ いわきツアーのアルバム
≫http://weekly-haiku.blogspot.jp/2012/09/blog-post_9240.html
■宮本佳世乃 いわきのこと
≫http://hw02.blogspot.jp/2012/09/blog-post_25.html
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2012年12月6日木曜日
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