2012年12月6日木曜日

【俳誌拝読】俳句創作集『いわきへ』

【俳誌拝読】
俳句創作集『いわきへ』

西原天気


A5判、本文60ページ。定価1,000円。発行人、四ツ谷龍。今年7月および9月福島県いわき市の文化団体「プロジェクト傳」主催の『いわき市の文化財を学び、津波被災地を訪問するツアー』に参加した7名の俳人が句を寄せています。

ひらかれてより雷を孕む地図  鴇田智哉

灯台のまなうらへ蛇たどり着く  宮本佳世乃

漂着のもの指さして日傘より  四ツ谷龍

裏山がそのまま遺跡蜻蛉来る  相子智恵

屠られし鶏の薄目の繊月ほど  太田うさぎ

きざはしに試し吹きして祭笛  菊田一平

積む瓦礫に秋潮といふ蠢く墓  関悦史

津波被災地へ「訪問」しての句作。いわゆる被災当事者ではない者が「そこ」で何をどう詠むのかという困難な問題に対して、作家7名の向き合い方はさまざまのはずです。一冊を読み通して、その問題が少なくとも軽々しく扱われていない印象をもちました。

全体に抑制が効き、その抑制が、土地への敬意と愛情(俳句の本質的な部分ですよね)へと結びついているような気もしました。

冒頭のまえがき的な短文「いわきへ」には、「俳句に対する考えかたはさまざまな顔ぶれ」とあります。おそらくこうしたイヴェントを縁にしてしか1冊の冊子に合同し得なかったであろうメンバー。その意味でも興味深い冊子です。

なお、「本冊子の売上はすべて『プロジェクト傳』への寄付とし、いわき市の復興支援活動に役立てていただきます」とあります。

問い合わせ先 四ツ谷龍 メールアドレス loupe@big.or.jp



当該ツアーの模様については、下記の2記事を。

関悦史 この地を見よ いわきツアーのアルバム
http://weekly-haiku.blogspot.jp/2012/09/blog-post_9240.html

宮本佳世乃 いわきのこと
http://hw02.blogspot.jp/2012/09/blog-post_25.html

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