2015年1月26日月曜日
●月曜日の一句〔対馬康子〕相子智恵
相子智恵
白鳥の柵噛む音のして暮れる 対馬康子
句集『竟鳴』(2014.12 角川学芸出版)より
白鳥を見に来た作者が、鳴き声ではない音に気付き、何だろうと思って見渡してみると、それは白鳥が柵を噛んでいる音であった。人工的な公園の池など、柵のあるところに飛来した白鳥なのだろう。もしくは季感はないが動物園で飼育されている白鳥かもしれない。
白鳥は人間から餌を撒いてもらっているのか、池のへりに寄ってくる。柵にぶつかったり、餌を求めて柵を噛むこともあろう。人がまばらな夕暮れは、餌を与える者もいない。白鳥がむなしく柵を噛む音が響くだけだ。現代的な風景の中の生き物にあわれがあり、現代ならではの叙情があると思った。〈音のして暮れる〉とフェードアウトしていく抑制のきいた風景の表現も余韻を残す。
鈍い金属音を響かせる白鳥の白い影を残しながら、水辺は暮れていくのである。
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