2015年1月16日金曜日
●金曜日の川柳〔田中博造〕樋口由紀子
樋口由紀子
花はやめたとバケツの中でいう
田中博造 (たなか・ひろぞう) 1941~
今年最初の新年句会。「花」という兼題で掲句をみたときにどきっとした。土間のバケツにほったらかしにしている花を思い出したからだ。我が家は寺だから、本堂や玄関・座敷に花をかかさない。買ってきたもの、いただいたものなど、とりあえずそれらをまずバケツに入れている。そこから必要なものを取り出して活ける。その中には使わずに終わってしまうものやバケツの中で萎れるものもある。せっかく花に生まれてきたのに、それだったら花はもうやめたと花は本当に思うだろうと、実ははじめて気づいた。そのような発想はいままでなかった。「バケツの中でいう」が堪えた。
個人的な実感でぴったりと嵌ったのだが、それとは別に一句全体が大きな比喩になって、世界や社会の在りようを鋭い感覚で捉えているようにも感じた。
〈蓮の花からカブトムシ部隊長 一筒〉〈散る時は散るので放っておいてんか 勝彦〉〈ここいらで薔薇と菊とを取り替える ひろこ〉 「ふらすこてん」(2015年新年句会)
●
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿