樋口由紀子
改札にはさまれているクリスマス
芳賀博子 (はが・ひろこ) 1961~
もうクリスマスである。一年は早い。一日は長いが一年は早いと祖母が言っていたことを年々ひしひしと実感する。
狭い自動改札口を通過する、大きなクリスマス用のプレゼント、あるいは両手に抱えたクリスマスケーキを思い浮かべた。もちろん、はさまれてもすぐにすり抜け、体勢を整えて、クリスマスのわが家に駆け足で帰っていく。
「はさまれているクリスマス」にクリスチャンでもないのに、商戦にのせられて、みんなと同じように行事をやってしまう自嘲を皮肉たっぷりに感じる。あたふたとなにものかに自動的に振り回されて生きている。そんなことを思った。〈焼けばわかるポリエステルか純愛か〉〈髷を切る時代は変わったんだから〉〈最後には雨の力で産みました〉〈咲いてゆく遠心力をフルにして〉 『髷を切る』(2018年刊 青磁社)所収。
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