樋口由紀子
雨ぞ降る渋谷新宿孤独あり
川上三太郎 (かわかみ・さんたろう) 1891~1968
近畿地方はやっと梅雨入りし、一気に雨模様になった。雨は降ったら降ったでたいへんだが、降らないのもたいへんである。雨が降ると気が滅入る。雨はどこにでも降る。もちろん、渋谷新宿にも雨が降る。地方の者には渋谷新宿には賑やかで華やかなイメージがある。賑やかで華やかに見える場所ほど回収され得ない孤独を抱えて込んでいるのかもしれない。
「雨ぞ降る」「渋谷新宿」「孤独あり」と舞台設定が絶妙で、独特の言い回しの、言葉の続け方に感心する。雨の降る渋谷新宿。渋谷新宿に潜む孤独。二つを繋いでいるのは「私」だろう。今雨が降っている渋谷新宿を「私」というものを媒介にして孤独と関係づけている。見える「雨」と見えない「孤独」。その見えない「孤独」を見える「雨」がクローズアップし、「私」にいっそうの「孤独」を感じさせる。それはまぎれもなく生きているということなのだろう。
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