相子智恵
本棚の匂ひのしたる茸山 茅根知子
本棚の匂ひのしたる茸山 茅根知子
句集『赤い金魚』(2021.9 本阿弥書店)所載
たくさんの本棚がある図書館や古本屋さんのような場所は、独特な匂いがする。日向のような、日陰のような、少しモワッとした甘い匂いだ。
こう言われてみれば確かに、草や枯葉が入り混じり、さらに日向と日陰も混在している茸山もまた、そんな匂いであるような気がしてくる。本棚と茸山とは驚きのあるつながりなのだけれど、同時にすとんと納得できる比喩でもある。どちらも懐かしさを誘う匂いだ。
最初は本棚を思い、そこから茸山へと広がっていく。包み込んでいる世界が大きくて、一読
で不思議な世界に連れて行ってくれる一句である。
●
0 件のコメント:
コメントを投稿