2021年10月11日月曜日

●月曜日の一句〔茅根知子〕相子智恵



相子智恵







本棚の匂ひのしたる茸山  茅根知子

句集『赤い金魚』(2021.9 本阿弥書店)所載

たくさんの本棚がある図書館や古本屋さんのような場所は、独特な匂いがする。日向のような、日陰のような、少しモワッとした甘い匂いだ。

こう言われてみれば確かに、草や枯葉が入り混じり、さらに日向と日陰も混在している茸山もまた、そんな匂いであるような気がしてくる。本棚と茸山とは驚きのあるつながりなのだけれど、同時にすとんと納得できる比喩でもある。どちらも懐かしさを誘う匂いだ。

最初は本棚を思い、そこから茸山へと広がっていく。包み込んでいる世界が大きくて、一読
で不思議な世界に連れて行ってくれる一句である。

0 件のコメント: