2021年12月10日金曜日

●金曜日の川柳〔墨作二郎〕樋口由紀子



樋口由紀子






伊吹山 青いヨーヨー陽にぬくい

墨作二郎 (すみ・さくじろう) 1926~2016

新幹線で東京に行くときの楽しみの一つは富士山を見ることであるが、その前に、琵琶湖の通り過ぎたあたりから見える伊吹山も好きな山である。富士山と同じように目で追いかける。伊吹山は滋賀と岐阜の県境にあり、修験道の霊地としても有名で、高山植物が多く見られる。

伊吹山を眺めているのか、伊吹山での光景なのか。青いヨーヨーに陽があたって、揺れている。「陽にぬくい」だから、陽がぬくいのではなく、青いヨーヨーがぬくいのだ。ヨーヨーが陽に当たったり当たらなかったり、伊吹山とヨーヨーのダブルイメージが美しく、多様な感覚がよぎる。自我のあいまいさとあやうさを映し出していると読むのは深読みかもしれない。日曜日に東京に行く。伊吹山と富士山に久しぶりに出会える。『尾張一宮在』(1981年刊)所収。

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