樋口由紀子
白菜をたっぷりと切る冬のおと
森中恵美子(もりなか・えみこ)1930~2025
1月4日に森中恵美子が亡くなった。女性川柳人の先駆者で、明るく、可愛く、逞しく、私たちを引っ張った。川柳を勢いづけてくれた功労者である。
冬野菜を刻む音はいろいろあるけれど、白菜をざくざく切る音は大根や葱とは一味違う。今夜は鍋なのだろう。それも「たっぷり」だから、いつもの一人鍋ではない。誰かがやってくる。冷たい、寂しい「冬の音」ではなく、楽しく、わくわくする、この音が森中恵美子にとっての「冬のおと」なのだろう。『仁王の口』(1996年刊 葉文館出版)所収。
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