西原天気
※相子智恵さんオヤスミにつき代打。
※相子智恵さんオヤスミにつき代打。
亀五匹鳴かず動かず梅日和 佐山哲郎
梅と亀をセットのように思うのは、きっと天満宮(あの「東風吹かば」の菅原道真が祭神)で亀を見ることが多いせいだ。天満宮と亀の関係は、浅学にして知るを得ないが、「見ることが多い」のは気のせいばかりではない気がする。東京の三大天満宮とされる、湯島、亀戸、谷保の社内には、たしかに亀がいる。
たいした信心のない私が神社に立ち寄るのは、正月、それに梅の頃なので、この句の《梅日和》にはよくよく得心する。日和なので、池のまんなかあたりの岩の上に《五匹》が集まって甲羅干しすることにも納得。得心/納得ばかりでは、俳句として味が足りないぶん、《鳴かず》として、季語「亀鳴く」へと手を伸ばす。読者サービスが行き届いている点、この作者、この句集の大きな美点、と、私などは思うが、その過剰さに鼻白む人もいるかもしれない。
なお、同句集の5ページうしろには、こんな句もある。
再度亀鳴いて麻酔の醒めにけり 佐山哲郎
実際には鳴かないらしい亀の鳴き声が聞こえるのは、藤原為家の時代なら川越の夕闇、現代なら例えば病院のベッドなのかもしれない。
掲句は佐山哲郎句集『和南』(2024年12月/西田書店)より。
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