2025年2月17日月曜日

●月曜日の一句〔青木ともじ〕相子智恵



相子智恵






一応は在る花貝の蝶番  青木ともじ

句集『南のうを座』(2024.11 東京四季出版)所収

〈花貝〉は桜貝のこと。小さく薄い桜貝に、これまたちぎれそうに儚い蝶番がある。そう、〈一応は在る〉のだ。桜貝の貝殻を拾う時、蝶番が残っているもののほうが少ない。

掲句、〈蝶番〉を見つけたのが発見である。もちろん写生的な〈一応は在る〉という発見が優れているというだけではない。「花」と「蝶」という言葉のつながりの発見でもあるのだ。そう考えてみると掲句は「桜」ではなく、やはり「花」であるべきなのだな、と思う。

掲句の前の句は、次の一句だ。

 干す漁具の中に花貝残りけり

この句の実直さがあるから、掲句の発見が上滑りしない、という句集の妙味もあった。

 

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