樋口由紀子
雨ばかり降る窓の位置かえてみる
西田雅子(にしだ・まさこ)
何げない景が意外な展開を見せて、「雨」と「窓」の様相が変わる。「雨ばかり降る」は実際に雨が降っているというよりは作者の心の方に雨が降っているということだったのだろう。そうでなくては「窓の位置かえてみる」と辻褄が合わない。
それにしても「窓の位置かえてみる」とは大胆に打って出たものである。日常の立て直し方の極意かもしれない。できないことをできるような気にさせてしまうから不思議だ。雨から窓に視線を巧みに誘導し、見え方や意識を変える。日常に対しての接し方や対処方法を矜持をもって形象化している。『そらいろの空』(2025年刊 ふらんす堂)所収。
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